‖ kyrie eleison. ‖
変革をもたらす天使。
世界を変えんがために降りた天使。
なかでも僕に与えられたのは恐れ多くも主の御名を戴いた天使なのだ。
なのに、僕は。
「ハレルヤ。」
片翼を見失った天使は宙に堕ちる。もがくことすら忘れてしまったのか。痛みは
もはや感覚ではなくただひたすらに痛みだった。
ただ一つ呟いたその名は天上におわす彼の人を讃えるためのそれではない。天使
はいつの間にか、己が主上より自らの片翼を愛したのだ。
それが罪だというのか。
あなたがそう導いたのに、それを罪だと断罪するのか。
罪だというなら、幼い無垢な同胞を朋輩を、殺めたことこそ罪だろう。僕らが受
ける罰のはず。2人が同じに受ける罰であらねば。 なのにこれは何だ。
あなたの愛とは何なのだ。
この身を生きながらにして裂かれた僕には分からない。
忌むべき連鎖を絶つならば、最期に僕らが同じに消えねば意味がない。無闇に生
かすだけがあなたの愛か。
それがあなたの答えなのか。
君は言うだろう。それ見たことか、信じたお前が馬鹿なのさ。
そうだ、僕らは僕らだけ信じていれば良かったのだ。そうして出逢ったあの天使
たちと、おなじ夢を見て。いつしか同じく彼らを信頼して。
やっとわかるなんてあまりにあんまりじゃないか。
僕らの名が背負うのは神という世界の偽りそのものだ。
そんな世界では俺らは息も出来ない。そんなのは御免だ。
僕らは僕らの意志で堕ちる。
そうこれは俺らの望んだ一つの通過点だ。
忘れはしない。神が、世界が、僕たちに成した所業を決して忘れてやるものか。
嗚呼きこえるか。俺たちはまだ見続ける。お前たちと見たあの夢を。
だから、みんな。
いこう、ほんとうの天上へ。
堕天には堕天の矜持があるだろうが。
そうして僕は目を閉じた。
ただ今は眠りがほしい。
君に、あいたい。
-------------------------- 2008.8.3. 秋津 |