「何してるのツナ。」
「あ、恭ちゃん。えっとね、骸さんにあげるもの作ってるの。」
複雑コンプレックス
そう言うと綱吉は作業を続けるために恭弥から視線を外してしまった。
骸とは黒曜中に通っている六道骸のことである。またの名を綱吉の彼氏ともいう。しかしこの点に関しては未だに恭弥は納得していないようだ。
一見すると並盛女子中に通う恭弥や綱吉には接点が全く無いように思われるが、並盛女子中が私立校なのに対して黒曜中は公立校。そのため互いの学校が意外と近くに存在している。しかしその内を覗けば、並盛女子中の生徒の多くはお嬢様気質が強く黒曜中の生徒を見下し、黒曜中の男子生徒はそんな彼女達に幻想に近い憧れを抱き、女子生徒は彼女達を妬み毛嫌いしているという構図が広がっている。そういったことが原因かは不明だが、黒曜中の中では並盛女子中の女子と付き合えた者は勝ち組とまで称される。
そんな中で綱吉と骸が恋人という関係にあるのはひとえに綱吉の性格が問題だと恭弥は思っている。とはいえそんな面白くない状況を恭弥も黙って見ているわけがなく、隙があればすぐにでも二人の仲を裂いてやろうと何度も画策はするものの今のところその成果は全くもって無に等しい。二人が付き合うことになった元を辿れば決して恭弥にも責任の一旦が無いわけではないのだが、それもこれも全て六道骸のせいにしているのだからこれではもはや誰の手にも負えない。
あの日は確か遅刻調査始めの前日で。
「恭ちゃん。帰ろう。」
「今日は委員会で残るから先に帰ってて。」
「そっか…。分かった、じゃあまた明日ね。」
そう言って少し寂しそうな顔をするツナを見て見ぬふりをして先に家に帰したんだ。いくら家が近くて登下校が一緒だといっても、用事もないのに一人で待たすなんて出来なかったから。
それを後悔したのは次の日の朝。
いつも通り少し寝坊をするツナを迎えに行った時、その顔を見たらすぐに分かった。だって戸口から駆けてくる姿は普段と何も変わらないのに顔だけは真っ赤に染まってたんだから。
嫌な予感がした。
前にもこんなことがあったから。自分の身も弁えないでツナに告白した馬鹿が。その時はツナから相談を受けた次の日にそいつを噛み殺してあげたけど、またこんなことがあるなんて思ってなかった。確かにツナはあの頃よりずっと可愛くなったけどその傍にはいつも僕がいたんだから。
「どうしたのツナ。顔赤いよ。」
「あっ、恭ちゃん。これはね、えっと、何でもないから。早く行こっ!」
その上あのツナが初めて僕に隠し事をしたんだから、これはもう間違いなかったね。早く手を回さなきゃ僕の大事なツナが穢されちゃうと思って影で必死になってたのを今でも覚えてるよ。もちろん何の手がかりも無かったから何も掴めなかったけど、それがその1週間後の帰り道で偶然出会ったんだっけ。
「ツナさんじゃないですか。」
いきなり後ろからそんな声がかかったから振り返ったら黒曜中の制服を着た3匹の群れがあって。とりあえず先頭の奴に殴りかかろうと思ったら横目でツナの顔が赤くなるのが見えたから止めることにした。噛み殺すことにしたんだ。不意打ちはあまり好きじゃないけどこっちは先にツナに手を出されてるんだから。
「こちらはツナさんのお友達ですか。」
「ろ、六道さん。放してあげてくださいっ。」
「骸でいいと言ったのに。しかし今放したらもう一振り飛んできそうですよ。」
一瞬何が起こったのか分からなかった。気付いたら右腕は六道という男に縛り上げられていた。振りかかった瞬間、確実に一撃入ると思ったのにだ。しかもそいつは爽やかに笑いながら僕のツナと会話なんてしてるじゃない。
「僕のツナに話しかけないでくれる。」
「おや。これはこれは、ツナさんに女性の彼がいるとは知りませんでした。」
「分かったらその手をどけてくれる。」
傍から見れば物凄い威圧が出てたはずだけど後ろの2匹が全く動じなかったからそのままでいたらどうしたらいいか迷っていたツナがだんだん慌て出して。
「恭ちゃん、止めてよ。六道さんも、この前は助けてくれたのに…。」
ツナが言うから止めてあげたんだよ。こんな奴が僕のツナを助けたというのも気になったし。だっていつでもツナを助ける役目は僕のものだったんだから。そうでもなかったらこの場で噛み殺してあげたのに。あいつが手を放した隙にね。
「ちょっとした冗談のつもりだったんですが、すみません。」
「いえっ。私も突然お会いしたから驚いて。」
ツナの顔はさっきよりも赤くなって例えるなら熟した果実だ。
「恭ちゃん。この人は六道骸さん。えっとこの前一人で帰った日あったでしょ。」
話をまとめると、僕がいなかった日に運悪く不良に絡まれて運悪くこんな奴に助けられたというわけ。ツナがこんな変な虫にかかるんだったら委員会を差し置いてでも一緒に帰るべきだった。
「へぇ。そのことにだけは礼を言っておいてあげるよ。」
「クフフ。ありがとうございます。」
「勘違いしないでよ。誰も君になんか感謝してないから。行くよ、ツナ。」
「えっ、待ってよ恭ちゃん!それじゃ六道さん、日曜日に。」
ツナを置いて先に歩いていたからツナがあいつに何を言っているかなんて聞こえなかった。実際ツナが僕以外に話しかけてることになんか興味もなかったし。でもそれがいけなかった。僕はツナを守れなかったんだから。
僕が男だったらあんな奴にツナを渡さなかったのになんて何度も考えたけど、考えて変わるわけじゃない。だから今はここで、ツナの一番傍で
「できたっ!」
その声に引き上げられるように恭弥の意識は目の前のツナに戻された。
「恭ちゃん。これ骸さんに見えるかなっ!」
そう言って恭弥の目の前に出されたものはフェルトで出来た人形だった。恭弥はなるほど確かに果物のような頭になっていると思いながらもそれを口に出すようなことはしなかった。
「1度しか会ったことのない僕に聞かないでよ。」
「あっ。そうだよね…。ごめん恭ちゃん。」
「で、それ。今から渡しに行くんじゃないの。」
授業が終わってから既に数十分。朝一緒に登校した際に放課後までに仕上げて渡しに行くと言っていたのだからそろそろここを出ないとまずいのではないだろうか。
「え、今何時…ってもうこんな時間!?」
綱吉は時計を見るや否やそれまでの姿勢と180度打って変わって慌て出した。
「仕方が無いから僕もついて行ってあげるよ。」
「でも家と反対方向だよ。帰るの遅くなっちゃうし。」
「何言ってるの。ツナ一人じゃ帰り道が心配で落ち着かないでしょ。」
「ありがとう恭ちゃん。」
(あんなのと二人になんかさせないから。)
こんな言葉にうまく騙されてくれるツナが愛しくて仕方がない。そう感じる恭弥は骸に会ったら今日こそ噛み殺すと心に誓った。
-------------------------- ツナヒバ百合の話をコソーリしたらこんなん貰えましたでへへ
いいんだよ!1827で6927だろーと私なら きっちり骸雲妄想できますから(得意気
じゃ早速ムクヒバ移行ルート書いてもいいですか(やめなさいね
空々タソありがとうございました!
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