あくの猫  ⇔          


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ひどく雨が降っている。
薄暗い学校では蛍光灯が普段より目立ち校内が少し違う雰囲気になる。この並盛 中にもそれは変わりなく、応接室も例外ではなかった。

「雲雀さん」
「…なに」
「もし僕が『愛してます』って言ったら、どうします?」
「その場で殺すよ」
「うーん…じゃあ『好きです』は?」
「そんなに死にたいの」

骸はソファに仰向けになったまま少し伸びをして、弱ったなぁ、と呟いた。
雲雀は窓の側で壁にもたれて外を見ていたが、ちらりと骸に視線をやると重くた め息をついた。

「反則」
「何がです?」
「正解を知ってるのに問題を出すな」
「知ってたら苦労しませんよ」
「…知らなかったら、君は今ここに居なかったよ」
「おやおや」

骸がのそりと上半身を起こし雲雀を見ると、気付いたように雲雀もこちらに寄っ てきた。

ざあ。
雨の音が遠く静かに絶え間ない。静かだ。ほんとうに静かだ。ただこの二人にだ けふさわしい静けさだ。

「…雲雀さん」
「惜しいね。あと一息」

そう笑って骸の目線まで屈む雲雀に、骸が応えるようにニイと笑んでみせ、ちゅ く、と音をさせてキスをした。


「正解ですか?」
「…落第は勘弁してあげるよ」


フンと鼻をならす雲雀は強引にソファに引き倒された。
二度目のキスはもっと深く。



(言葉にできるくらいの生易しい感情で近寄ってこないでね)
(軽々しく口にしたとてそれで済むのか?)

(その目で解るのに言葉にしてしまうことに意義は無い)
(また飢えにも似た焦燥に肌を掻きむしるだけ)


(言葉は僕らにこの雨音以上を与えはしない)


そんな雨の日。









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No mean but me,(ここにあるのは僕らだけ)