あくの猫  ⇔          


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(きもちいい)

ぬるいまどろみの中でゆうらりとしていた。

リザ・ホークアイの密かな楽しみは、たまの休みにこうして何もせず穏やかな時 間に身を委ねることだった。
普段から気を抜けない立場にあるので、こうして頭を切り替えてやるのは実は大 切な事である。

カーテンを透かす西日が暖かい。その温もりにもっと沈みたい。晩ご飯はなんだ ろう。いい匂い。トマトのリゾットだと嬉しいけど。

(え、)
(いい匂い?)

ふう、と意識が浮かんでくる。それに合わせて瞼がうっすら開かれる。
自分が横になっているソファからはキッチンに座る後ろ姿しか見えないが、たし かにあの人がそこにいる。あの黒い髪を私が見紛うはずもない。

「大佐…」
「あ、起きたか?」

おはよう、と呑気に宣うのに軽く眩暈を覚える。

「何をしてらっしゃるのか訊いてもよろしいですか」
「何って、暇だったから夕飯をだな」
「そもそも不法侵入ですが」
「今更だな。だいたい君は寝すぎ」
「いいじゃないですか休みに私が何してようが」

重いため息をつきソファを離れる。座る彼の隣に立てば腰を軽く抱き寄せられる 。

「一回やってみたかったんだよな」
「何をですか?」
「恋人が寝てる間に食事の用意…みたいな」

また訳の分からないことを。
それは本来される方が嬉しい行為だろうに、このロイ・マスタングという男はど うしてこう、どうでもいいところで微妙にずれているのか。これも今更なことで はあるが。

「…で、何を作って下さったんです?人の家の冷蔵庫で勝手に?」

髪をまとめ直しながら意地悪く訊く。
ふと、こんな風に二人で過ごす夕べなんてしばらく無かったと思い出す。すると 途端に心が少し浮きたつような気がした。

束の間ゆるされる安らぎを忘れない。



「ミネストローネ」








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まだ東方で割とのんびりしてた頃あたりで…