あくの猫  ⇔          


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夢を見た。
目覚めた瞬間忘れてしまったが、
あれは確かに彼の人の夢だった。

夢に見た。
無性に、海に行きたくなった。


‖夢の雫‖


まだ夜の明けきらぬ霞んだ空気。
彼誰時とはよく云ったものだ。黄昏のそれと違い、今なら本当に誰かに逢いそうだと予感させる。それも、誰かわからない、誰かに。きっと逢えてもわからないのだ。これは、そんな時間だ。

海はとても静かだった。怖さと、痛みと、あとは何だろう。日番谷にはもうわからなかったが、そこには幽かにやさしさが漂っていた。在るものしかないこの海は、ひどく綺麗だと思った。何も、なにも考えなくていいのだ。此処では。

思考が波の音に沈んでいく。



ざあん。
この世界の何処かに、いる。
確実に、いるのだ。



ざあん。
彼の人が、日番谷に見えない場所にいるというのなら、それはこの水平線の向こうではなかろうか。



風が冷たい。潮の匂い。砂のざらつき。
感覚が、思い出を呼んできてしまいそうだ。



――寒いね。

――そうでもないだろ。

――そう?ボクは、


寒いよ。



ああ、ほら。
感覚の呼んだ記憶がさらに感覚を呼ぶ。
肩に乗るその手を感じる。

いったい何がそんなにも寒かったのだ。



――…おい、何してんだ。

――キス。

――阿呆か。やめろ。

――うーそ。これは冗談。


やって、そない易々とくちづけしとったら、なァ。



目まぐるしく流れてゆく日々の中で忘れられていた言葉が還ってくる。
かえってきても、何の意味もなさぬのに、何故還る。
望むのさえ許してはくれぬのに、何故。


海は朝焼けに色を染める。
心は色を亡くしていく。


想いも最早、相手を失くし身のうちで澱のように沈むだけ。



ああ、



これ以上はないのだ。
自分と彼の間に、これ以上の熱は必要ない。



ああ、それでも、





――さ、戻ろか。





それでも、
俺はこの微熱の記憶に生きてゆく。





「いちまる、」

――なぁに?
――ほら、やっぱり寒いんや。


波にまぎれて、聴こえた気がした。
夢の残していったお前に届くはずもないのに。








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机から何か出てきたwww
前のヤツとかぶりすぎでワロタorz