――日番谷はーん ――今年もうまいことでけたで〜 ――イチバンに持ってきてんで? ――置いとくから食べてなっ
冬の空は、とおい。
***
人は、それぞれが思っているほど弱い生き物ではない。少なくとも日番谷はそう
だと確信している。ただ、同時にその逆も真実だと最近感じるようになった。
それはやはり先に経験した別離によるのだが。
(まあ)
(そんな気はしてたけど)
(な)
結局自分は、裏切りに憤り立ち上がり過去を過去にできる程に強くなく、しかし
寂しさに哀しさに浸りきれる程には弱くなかったのだ。
そうして宙吊りになった自分を置き去りにして日々を過ごしている。
「…隊長」
「なんだ?」
「何かつまめるモノでも持ってきましょうか?」
言われて気付いた。
書類に筆を走らせるかたわら、左手が竹の籠をもてあそんでいた。
この時季、今まで通りならその籠にはこんもりと干し柿が盛られているはずだっ
た。
(習慣って恐ぇな…)
(いや、いやいや)
(それは無いな)
松本には端からばれているのだろうが、それでも気まずい。彼女だって自分と同
じか、それ以上に何かを感じているのだから仕方のないことである。
だが実は、松本はそんな風に敏感な日番谷をこそ哀しんでいたのだが。
「…手が汚れないやつな」
「じゃーお煎餅で!あ、やちるがくれたこんぺいとうもあったかな?ちょーっと
待ってて下さいね〜」
松本が席を外せば部屋には日番谷が一人だけ。乾いた空気はこの思考にも似てい
る。
(駄目だよなあ…)
(そろそろ、)
このままでいればいずれ破綻がくる。取り残された心を連れ帰らなければいけな
い。早く、早く。
急けば急くほど冷める自分もいるのだが、いい加減にしなければ取り返しがつか
なくなってしまう。
(どこまで、)
(どこまで大丈夫なんだろう)
とりあえず松本の煎餅と草鹿のこんぺいとうで熱い茶をすすろう。
――またかよ…
――俺それ嫌いだって言ったよな!?
――おいッ!持って帰れよ!
――…松本に全部食わすからなー!!
休憩はもう終いだ。
-------------------------- カラブリ+ネタ。干し柿。 ってかカラブリのイヅル凄いwwww どんだけ!
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